約束を持たない駅に 戻らない秋を本にはさんだまま コートの襟を立てて入り込む ( 起点の条件は 朝一番であれば良く ) 人差し指が書かれた切符を 白紙の時刻表にかざすと 私と 私の本は 待つことだけを許された駒になる 横書きの活字の並びの美しさを 手にしたあとは ダイス次第でどこまでも進むしかない ( 時間とは そんなもの ) やがて 朝霧にかすむ丘から 緊張を抱えた鋭い眼光が見えると 口の無い駅員が現れて 鳥を操るように 両腕を泳がせながら 獰猛な息を吐く列車を ホームに誘導し 高温の体を伏せさせる ( 約束の無い駅の 一幕ものの見事なステージ ) 私の本はその時から 鳥を操る彼の物語を書き始め 私は生まれたときに持たされた 悲しみの終点をさぐる線から 降りるすべを 知ろうとはしない
by alex_zone
| 2008-11-11 23:45
| 詩
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