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 最初から存在していないもの 

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                 最初から存在していないものを
                   最初から愛していた


                 木の無い道を歩きながら
                   ことばを託せる葉をさがし続けた


                 雨音が薄く聴こえるような隔たりを
                   自分で作って 相手を守った


                 共有する水辺に こんこんと光は湧き
                   顔の見えない理由は
                   眩しさのせいだと信じた


                 最初から無いものは 
                   終わりもつくられず
                   私たちはしあわせのままだった










 
   
# by alex_zone | 2009-01-19 22:36 | 読んだひとへ
 苦手な月

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               見映えのよい解釈を無視して
               飛び乗った列車には
               後悔の吊り革が揺れている


               まわりを囲む
               高速移動の集団は


               秩序の海図を読み解く
               スキルだけを素肌に巻いて
               二本足で上手に立っている


               朝が早過ぎて
               まだ男とも女とも
               カテゴライズされていない青い顔には
               車内アナウンスよりも
               ドアの開閉音がよく似合う



               終わりを啓く
               十二月の吊り革は
               苦手を説かれそうで
               永く掴むことができない


               雪の月
               滑りやすい足もとに
               慣れてしまったわたしは


               何を支えに
               自分を保てばよいのだろう









 
# by alex_zone | 2008-12-26 22:24 |
 転がるダイスを見せる駅

 転がるダイスを見せる駅_e0068684_2341166.jpg



                 約束を持たない駅に
                 戻らない秋を本にはさんだまま
                 コートの襟を立てて入り込む


                 ( 起点の条件は 朝一番であれば良く )


                 人差し指が書かれた切符を
                 白紙の時刻表にかざすと
                 私と 私の本は
                 待つことだけを許された駒になる


                 横書きの活字の並びの美しさを
                 手にしたあとは
                 ダイス次第でどこまでも進むしかない


                 ( 時間とは そんなもの )


                 やがて
                 朝霧にかすむ丘から
                 緊張を抱えた鋭い眼光が見えると


                 口の無い駅員が現れて
                 鳥を操るように
                 両腕を泳がせながら


                 獰猛な息を吐く列車を
                 ホームに誘導し
                 高温の体を伏せさせる


                 ( 約束の無い駅の 一幕ものの見事なステージ )


                 私の本はその時から
                 鳥を操る彼の物語を書き始め


                 私は生まれたときに持たされた
                 悲しみの終点をさぐる線から
                 降りるすべを
                 知ろうとはしない










               
# by alex_zone | 2008-11-11 23:45 |
 オカエリナサイ

 オカエリナサイ_e0068684_20572691.jpg



               街を噛む 
               秋の西日は
               人から影を切り離し


               独りを
               ふたりに見せている


               跳ねている
               もうひとりのあの子を
               抱きしめる影も
               言葉を持つのだろうか
# by alex_zone | 2008-10-16 20:59 |
 みんみんみーん

 みんみんみーん_e0068684_22232810.jpg




              蝉がたくさん鳴く時期は
              道にも蝉が落ちている


              転がったまま腹をひろげ
              もはや動くことをしなくなった蝉たちは


              あやうく踏みそうになった
              私を怖がらせ
              瞠ったままの眼の奥に着床すると
              順番に鳴き始める


              その声の力強さに
              樹上との差は無い


              精一杯 
              空を鳴きつくして
              私を鳴きつくし
              爽やかな青に身を変えるころ
              八月の輪郭もそろそろ薄くなる
# by alex_zone | 2008-09-01 22:34 |



写したものと書いたものを投げっぱなしにするサイト。
by alex_zone